2024/05/31 11:45
日本の伝統的な紙「和紙」の原料である「楮(こうぞ)」についてご紹介します。和紙と洋紙の最も大きな違いは、洋紙がパルプを使うのに対し、和紙は靭皮(じんぴ)と呼ばれる植物の繊維を使用することです。この特徴により、和紙は強度と劣化において優れています。
和紙の主な原料として、三椏(みつまき)、雁皮(がんぴ)、そして楮が挙げられます。特に楮は代表的な原料で、和紙全体の約8割程度が楮から作られています。日本の和紙産地においても、楮は中心的な役割を果たしています。
楮には多くの種類があり、地方によって異なる名称で呼ばれていることもあります。例えば、越前では「那須楮」が使われ、厚みのある奉書や木版画向けに多く利用されています。有名な人間国宝、岩野市兵衛氏が漉く奉書や、ユネスコ文化遺産に指定された本美濃紙も那須楮が用いられています。また、高知県土佐は最大の楮の産地で、「アカゾ」と呼ばれる楮が典具帖用紙や高級包装紙として多くの需要を持っています。土佐の「タオリ楮」はカジノ木系の原料で、繊維が長く強靭な性質を持つため、提灯紙や傘、型紙原紙などに利用されています(和紙文化研究会資料より)。
しかし、残念ながら楮の栽培農家は年々減少しており、国内産の楮は貴重な存在となっています。かつては楮の収穫風景が冬の風物詩として広がっていましたが、今では珍しい光景となってしまいました。
和紙の原料は和紙の需要とともに変動し、現在も厳しい状況が続いています。しかし、楮の絶滅を防ぐためには、和紙の需要を回復させるだけでなく、他の用途を模索することが必要です。例えば、洋紙との協業を進めて、機能紙の領域にもチャレンジしてみるのも良いアイデアでしょう。さらに、漢方など別の用途の研究も興味深いでしょう。
楮は日本の文化や伝統に欠かせない大切な原料です。その絶えることなき美しさと機能性を守るために、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。和紙の素晴らしさを再認識し、未来へつなげていくための取り組みを大切にしていきましょう。
おわり